歳時記

「週末別居」を考える

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 連休は、九十九里の仕事場である。
 私は机にかじりついて原稿書き。
 愚妻は日帰り風呂に入り、昨夜はソバ屋で熱燗(あつかん)をキュッ。
 私は早く引き上げて仕事を続けたいのだが、
「ここの天麩羅はおいしいわねぇ」
 と極楽気分で、
「焼酎の水割りにしようかしら」
 ノンキな女なのだ。
 水割りを注文してから、
「月に一回じゃなく、これからは一人で毎週来たらどうなの?」
 と言いだした。
「火曜日の稽古がなくなったのだから、土曜の夜に稽古が終わってから来て、日、月、火と泊まって、水曜の稽古時間までに帰ってくればいいんじゃない?」
 そして、こうつけ加える。
「ゆっくり仕事ができるし、昼は日帰りに行けば気持ちがいいんじゃない?」
「それはいい考えだ」
 と私はヒザを打ちかけたが、ピッピッピッと警告音が頭で鳴る。
 愚妻は、私が11日間、京都に行って留守をしたことに味をしめているのだ。
「亭主元気で留守がいい」
 という言葉がかつて流行ったことがあるが、うるさい亭主から開放されることの楽しさを悟ったにちがいない。
「おまえの魂胆はミエミエだ」
 と、いつもなら嫌味を言うところだが、昨夜は思いとどまった。
 一人で来れば何かと不自由だが、いずれどちらかが先立つのだ。
 そのことを考えれば、予行演習で「週末別居」もいいかもしれない。
「それもそうだな」
 と私は素直に提案に乗り、手帳を見ると5月の週末は予定がびっしり。
「5月は無理だから、6月からだな」
 そう告げたときの愚妻の落胆した顔を、私は生涯、忘れないだろう。

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