歳時記

今朝、いきなりの雨

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 季節は移ろい、夜明けが5時をまわるようになってきた。
「出発は6時だ」
 と昨夜、畑の草取りに出かける時間を愚妻に告げると、
「雨みたいよ」
 と、足を引っ張るようなことを言う。
「おまえは人の心がわからんのか。こういうときは、ウソでもいいから、〝ハイ〟と弾むような声で返事するものだ」
「バカみたい」
 で、今朝、6時。
 原稿の手を止めて、窓を少し開けて遠くの空を見ると、青く晴れている。
(バカな女が、何が雨だ)
 毒づきながら、愚妻を起こそうとしたら、グラリと小さな地震。
 と同時に、ザーとひと雨きたではないか。
 愚妻が起きてきて、
「雨ね」
 と、嬉しそうに言う。
「おまえは人の心がわからんのか。こういうときは、ウソでもいいから、〝残念ね〟とガッカリした声で返事するものだ」
「バカみたい」
 言い捨てて、ベッドへもどっていった。
 いま6時20分。
 雨はやみ、空は明るい。
 だが、雨のあとでは草が濡れ、畑がぬかるんでいる。
 草刈りはできない。
 残念なような、それでいて、何となくホッとするのはどうしてだろう。
 愚妻の正直さが、少しは理解できるような気がした。
 

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