歳時記

薬が見つからない

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 京都1泊目。
 血圧の薬がどこにあるのかわからない。
 旅行ケースをひっくり返すが、見つからないのだ。
 すぐさま愚妻に電話。
「薬はどこへ入れた」
「ファスナーの中よ」
「ない」
「入れたわよ!」
「そもそもファスナーがないと言っておるのだ」
「ある!」
 よく見ると、ケースの内側にファスナーがあった。
 引き開けると、透明の小さなナイロン袋が3つ。
 それぞれ油性ペンで、愚妻の文字が書いてある。
《血圧のクスリ》《痛風のクスリ》《アレルギーのクスリ》
 毎日服用しているのは血圧の薬だけで、痛風とアレルギーは万一に備えてのものだ。
 何しろ私は、鎮痛剤アレルギーで、痛みが出るようなことがあれば一大事なのである。
 それにしても、万全の準備ではないか。
 愚妻がエライのではない。
 ここまで導いた私の苦労が、ようやく実りつつあるということなのだ。

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