歳時記

「広島の人間じゃけん、言葉が荒いかもしれん」

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 愚妻が、道場の窓に下げる簾(すだれ)を何枚か買ってきた。
「ちょっと、取り付けてよ」
 と言うので、私は速射砲のごとく、こう言い返した。
「おう、甘えるところは甘えて、こっちも突き放すところは突き放すけんのう。そのぐらいの覚悟でやれえよ」
「・・・」
「ええか、コンセンサスを得んにゃいけんど。そうせんと、わしら何もせんけんのう。ほいじゃけん、ちゃんとやれ」
「・・・」
「知恵出したところは助けるが、知恵出さんヤツは助けん。そのくらいの気持ちを持ってやれぇや」
「・・・」
「それから、もうアレが欲しいコレが欲しいはダメじゃけんのう、知恵出せや、知恵を」
「・・・」
「それから、お客さんが入ってくる時にゃ、自分が入ってから・・・」
「ちょっと、怒るわよ!」
 愚妻が柳眉を逆立てたので、私はさらにこう言った。
「すまん、すまん。わしは広島の人間じゃけん、言葉づかいが荒ろうなったかもしれんが、ま、それはそれとして、自己都合で、辞任させてもらうにするけん」
「ホントに役に立たないんだから」
 と悪態をつきながらも、愚妻が自分で簾(すだれ)を取り付け始めたのである。

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