いま、バラの花が真っ盛りだと、テレビでやっていた。
自宅から小一時間ほど先にバラ園がある。
愚妻が、
「見に行こう」
と言うので、叱りつけた。
なるほどバラはきれいだ。
それは認める。
だが私は、バラが好きではないのだ。
「どうしてよ」
と愚妻が挑戦的な目で言うので、私は答えた。
「バラには棘(とげ)がある」
「あったっていいじゃないの。取るわけじゃないんだから」
「いかん、絶対にいかん。棘で身を守ろうとする、その根性がよくない。野菊を見よ、コスモスを見よ。無防備で、己をさらけ出しているではないか。そこに真の美があるのだ」
「バカみたい」
愚妻は、あきれたが、私はそう思っている。
禅語に、
『花、無心にして蝶を招く』
というのがある。
棘で〝武装〟してまで咲くことはないのだ。
バラの棘(とげ)
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