今年は花見をしなかった。
気がついたら、桜はとっくに散っているではないか。
「おい、なぜ桜のことを言わんのだ」
愚妻にクレームをつけると、
「余震で、桜どころじゃなかったでしょ」
言われてみればもっともで、なるほど〝サクラ気分〟でなかった。
が、しかし、それでは人生に潤(うるお)いがなくなってしまうではないか。花鳥風月を愛(め)でてこそ、日本人だ。
そんなわけで、初夏の海を眺めようと、今日はこれから九十九里の仕事場へ出かける。
大震災で多くの人名を奪った海は、今日もまた、何事もなかったように単調な波を寄せては返していることだろう。
だが、同じに見えて、波もまた「無常」なのである。
いつのまにか桜は散った
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