歳時記

夜の新宿歌舞伎町

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 昨夜、新宿の中華料理店で、私が主宰する昇空館の支部長新年会が開かれ、出席した。
 開宴まで少し時間があったので、ヒマつぶしに歌舞伎町を歩いた。
 週刊誌記者時代は、明け方まで歌舞伎町のネオン街に浸かっていたものだが、いまは打合せでたまに訪れるくらいだ。それも、指定された飲食店へ直行するため、ゆっくり歌舞伎町を見て歩くことはない。
 で、コマ劇場あたりから区役所通りをブラブラ歩いてみた。
 昔と変わらず、猥雑な街だ。
 かつて私は歌舞伎町について、小説でこんな記述をしたことがある。
《新宿歌舞伎町は、コマ劇場を中心とする六百メートル四方を言う。
 面積にしてわずか0・36平方キロ。
 この狭いエリアにバー、クラブ、性風俗店など三千余がひしめき、百数十余のヤクザ事務所が密集する。欲望、金、セックス、暴力、ミエ、裏切り・・・・。人間のあらゆる煩悩をネオンというミキサーに放り込んで攪拌(かくはん)した街――それが歌舞伎町だった。》
 歌舞伎町に〝棲息〟する私の友人たちの誰もが、
「ここへ帰ってくると、ほっとする」
 と口をそろえる。
 歌舞伎町が「煩悩の坩堝(るつぼ)」であるからだろうか。
 人間のすべてを受け入れ、そしてミキサーで攪拌していく。
 それも一年三百六十五日。
 歌舞伎町には四季がないことに、あらためて気がついたのだった。
 昇空館支部長新年会は、気が置けない仲間同士が酒を酌み交わし、楽しい時間を過ごした。
 私は煩悩の塊であることを自覚しつつも、
(ネオン街は、肌に馴染まなくなったな)
 そんな思いがした一夜であった。
 

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