歳時記

今日、愚妻は白内障の手術

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 いま、病院にいる。
 愚妻が今日、もう片方の目(白内障)の手術をするのだ。
 3月(だっと思う)が、片方を手術し、〝快気祝い〟に行ったレストランで、
「わあ、カンパリオレンジの赤色がこんな鮮やかだったとは!」
 愚妻らしく、即物的なたとえで喜びを表現したものだった。
 きっと、カンパリオレンジの赤に魅せられて、今回の手術を決意したのだろう。
 おかけで私は、ノートパソコン持参で朝から付き添い、休憩室で原稿を書いている。
 罪なカンパリオレンジである。
「仕事、進んでるの?」
 手術の時間までヒマなものだから、フラフラと病室から出てくる。
「邪魔するな」
「邪魔なんかしてないわよ。進んでるのかどうか、訊いただけじゃないの」
「それを世間では邪魔と言うのだ」
「まったく、ああ言えばこう言うなんだから」
「ウルサイ!」
「なによ、その言い方!」
 看護婦さんが点眼にやって来なければ、わが夫婦は醜態をさらすところであった。
 それにしても初回手術のときは緊張していた愚妻だが、二度目となれば現金なもので、余裕をカマしている。
 手術中に鼻歌でも歌わなければいいが。
 私も人並みに、夫らしく心配をするのである。

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