歳時記

努力逆転の法則

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 仕事に追われ、先月から〆切りと競争の日々が続いている。
 不思議なもので、忙しくなると、それに比例して眠くなるのだ。
 たぶん頭を酷使するせいだろうと思っていたが、どうやら違うらしいことに気がついた。
(書かねば、書かねば)
 と気持ちがあせればあせるほど憂鬱(ゆううつ)になり、その結果、「眠い」に逃避するというわけである。
 なぜそのことに気がついたかというと、
(私が眠くなるのは、ひょっとして《努力逆転の法則》に相通じるものがあるのではないか?)
 と、ひらめいたからである。
《努力逆転の法則》とは、
「頑張れば頑張るほど、結果はその努力とは反対になる」
 という法則で、提唱者の名前をとって「エミール・クーエの法則」と呼ばれる。
 たとえばスピーチをするときに、
(アガるな、アガるな)
 と思えば思うほど、余計にアガってしまう、というわけである。
「エミール・クーエの法則」を小難しく言えば、
《意志力と想像力(イメージ)が相反した場合は想像力(イメージ)が勝つ。意志の力で努力すればするほど想像力(イメージ)は強力となり、その意志の努力とは反対の結果なる》
 つまり「アガってはいけない」(意志)より、「アガるだろうな」(想像)のほうが強いわけで、「アガってはいけない」という《意志》が強くなればなるほど、「アガるだろうな」という《想像》が強くなり、結果、《意志》と反対の結果になるというわけだ。
 だから《努力》は逆効果。
(アガってもいいや)
 と《努力》を放棄すれば、アガらなるのである。
 ならば、私が「眠い」から解放され、ガンガン執筆するには、
(書かなくてもいいや)
 と思えばいいということになる。
 で、そう思ってみた。
 しかし、それでも眠い。
 これはきっと、「書かなくてもいいや」という思いが足りに違いない。
 で、「書かなくてもいい」と何度も自分に言い聞かせたところが、こちらはなぜか《努力逆転》は起こらないで素直に反応し、ますます眠くなっていくのである。
 

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