歳時記

オーデコロンを買った

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 オーデコロンをつけてみようと思った。
 理由はない。
 ふと思い立ったのである。
 私は何事も思いつきで事を運ぶ傾向がある。
 で、愚妻に命じてデパートへ買いに走らせた。
 愚妻が素直に従ったのはもちろん理由があり、洋服を買うお金を私が提供したからである。
 だから、嬉々として出かけていった。
「安い香水はダメだからな」
 と念を押していたので、ナントカというフランスのオーディコロンを買ってきて、
「手首にシュッと少量を吹きかけてから、それを両手首をすり合わせ、耳の後ろにつけるのよ」
 愚妻の説明を聞いて、手首にシュッと吹きかけたつもりが、つい力を入れすぎてしまい、シュッシュッシュッと三連発。
「多い!」
 愚妻に怒鳴られた。
 なるほど、匂いがプンプンで気持ち悪くなってきた。
 こんなもの、つけるわけにはいかぬ。
 それに、考えてみれば、仏道を志す者がオーディコロンとはバチ当たりも甚(はなは)だしいではないか。
「やめた」
「エッ?」
「オーデコロンはやめたのだ」
「何よ、買いに行かせておいて」
「バカ者、知らんのか。『朝令暮改』『改むるに憚(はばか)ることなかれ』。そして『君子は豹変す』。わかったか」
 私は愚妻の反撃を覚悟した。
 だが、その気配もなく、ボソリとつぶやいた。
「これって、男女兼用なのよね」
 さすがに私の性格をよく知っていると、これには感心した次第である。

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