歳時記

新型インフルと「人生の実相」

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 新型インフルエンザにかかって、道場を休む子が少なくない。
 学級閉鎖になるくらいだから、それも当然だろう。
 昨日、新型で休んでいた小学生が稽古にやってきたので、
「風邪は治ったのか?」
 と声をかけると、ムッとした顔で、
「風邪じゃないよ、新型インフルだよ」
 と私に抗議した。
 あるいは先日、弟が新型で、兄が従来のインフルエンザにかかった小学生がいる。
「ボク、新型。お兄ちゃん、古いやつ」
 と、弟が得意そうに私に言い、兄は面白くなさそうな顔をして黙っていた。
 妙なもんじゃないか。
 秋口など、新型インフルにかかったことを内緒にしていたのだ。
 そのころ、やはり兄弟で道場に来ている子の兄が一週間ほど休んでいるので、
「兄ちゃん、どうした?」
 と弟に問うと、私の耳元でささやくように言った。
「ママが内緒にしとけっていったんだけど、兄ちゃん、新型インフル」
 ところがいまは、どうだ。
 ここまで新型インフルが広がったので、みんな慣れっこになって、
「ボク、新型」
 と、あたかも流行の最先端を行っているかのように、得意そうに言うのである。
「赤信号、みんなで渡れば何とやら」
 というやつなんだろう。
 いま、大不景気である。
 金詰まりであることは本来、カッコ悪いはずなのに、みんな平気で、
「金がない」
 と言うようになった。
 相手にそう言われて、
「そうだろうな」
 と、こっちも納得する。
 悩みも同じで、「自分だけ」が悩むから苦しいのであって、みんなが同じように悩んでいれば平気なのだ。
 どうやら、ここいらに〝人生の実相〟が潜んでいるような気が、私はするのである。
  

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