歳時記

シャンパンの誘惑

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 昨日は午後3時から、愚妻と100坪のほうの畑の草取りに出かけた。
 草刈り機では地中の根っこの部分が取れないので、カマをつかってガリガリと地面を引っかいて草を取っていくのだが、これが楽じゃないのだ。
 初秋とは言え、陽はまだ空にあって汗はダラダラ。
 立ち上がると、フラリとくるのである。
 で、夜。
 ひと風呂浴びて、近所にある馴染みにのフランス料理店に出かけた。
 道々、愚妻が、
「きょうはシャンバンにしようかしら。よく冷えたやつ」
 と私に問いかける。
「勝手にしろ。おまえが何を飲むかまで、わしは関知せん」
「あなたも飲めばいいじゃないの」
「アホ。わしは酒をやめとるじゃないか」
「でも、あんなに汗をかいたんだから、一杯くらいかまわないじゃないの」
 ここで、私の脳裏に、
(それもそうだな。あんなに頑張ったんだから)
 そんな思いがよぎる。
 と同時に、
(なるほど人間というやつは、禁を犯したり悪事に手を染めるときは、自分に言い訳をするんだな)
 という思いが一方でした。
 禁煙して20年になるが、あのときも、
(切りが悪いから来月からにしようかな)
(やっぱり新年からだ。なんたって一年計は元旦にあるんだから)
(一度にやめなくても徐々に減らしていけばいいんだ。何事も急激なことはよくない)
 何だかんだ自分に〝言い訳〟し、なかなか禁煙できなかったものだ。
 そんなこんなの経験から、人間は自分の意志に背いた行動を取るときは、自分に対して「言い訳」をするということがよくわかっている。
(頑張って汗を流したんだ。一杯くらいかまわないじゃないか)
 という「言い訳」は、心の隅に飲酒に対する後めたさがあるということなのである。
 たがら飲んではならない。
 私はいつものようにオレンジュースを、愚妻はシャンパンを注文し、
「よく冷えてておいしわ」
 と、ノーテンキなことを言っている。
 アホなやっちゃ。
 私が賢明にも踏みとどまったからいいようなものの、もうちょっとで愚妻の甘言にコロリといくところだったのである。
 
  

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