歳時記

「民主主義はペテン」と鮨屋のおやじ

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 昨夕、半年ぶりに千葉県某市の鮨屋へ顔を出した。
 飲食店というのは、何かの拍子に足が遠のくと、そのままズルズルと行かなくなるものである。
 稽古がない夜は月曜、木曜、日曜の3日しかないので、この鮨屋に限らず、どうしてもご無沙汰になってしまうのだ。
 で、鮨屋である。
「忙しい?」
 私が話をふってみる。
 鮨屋が忙しければ、景気は回復基調である。
「ヒマだね、ヒマ。本当にヒマ」
 おやじさんが顔をしかめたところで、テレビで党首討論が始まった。
 麻生総理が、景気対策がどうのと口を曲げてしゃべっている。
 おやじさんは鮨を握る手を休めず、チラリとテレビを見やって、
「まったく麻生の野郎、何を考えているんだか」
 さんざん悪口を言ってから、
「どうして、こんな世の中になっちまんだろうねぇ」
 と、つぶやくように私に問いかけた。
「まっ、アメリカのサブプライム問題が‥‥‥」
「おいおい、アメリカのことまで知っちゃいねぇよ。オレはただ、何十年もこうやって一所懸命に鮨を握っているだけで、なんの悪いこともしちゃいない。それをアメリカがどうの、百年に1度の不景気がどうのと言われても、困っちまうぜ」
 確かにそうだ。
 サブプライム問題にしても、経済危機にしても、あたかも〝天災〟のごとく報道しているが、これは〝人災〟なのだ。
 ゼニ儲けに走った連中がマネーゲームという〝火遊び〟をして、それが大火事になったのである。
「まったく、誰が責任をとってくれるんだ」
 と言うおやじさんの怒りはもっともだろう。
 それなのに麻生総理は、
「エー、100年に1度の経済危機を迎え、何より経済対策に力を入れてまいりまして、その効果がようやく‥‥‥」
 テレビでノンキなことをしゃべっている。
 だが、麻生総理が悪いのではない。
 彼を選んだ自民党議員が悪いのであり、その議員を選んだ国民に責任があるのだ。
 おやじさんにそう言うと、怒りで顔を朱に染めて、
「なんでぇ、民主主義ってのはペテンのことだったのかい!」
 トロを握る手に、ググッと力が入るのであった。
 

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