歳時記

東国原知事の「今のところ」考

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 東国原知事が出馬するのかどうか、メディアをにぎわせている。
 彼が繰り返し口にする「今のとろは考えていません」という言葉にズルさを感じるのは、私だけだろうか。
 出馬しないなら「しない」と言えばすむことなのに、「今のところ」という〝保険〟をかけるところがいやらしいのである。
 記者会見で、出馬について執拗に質問され、
「私の姿勢は一貫している」
 と逆ギレしていたが、これは彼の思いあがり。
 たとえば、こんな例はどうか。
 婚約者の彼女が、彼氏に尋ねる。
「ねぇ、わたしのこと、愛してる?」
「今のところは愛しているさ」
 これで彼女は納得するだうか?
「ちょっと、どういうことよ。将来は愛さなくなるかもしれないっていう意味?」
「なに言ってるんだ。今のところは愛しているって何度も言ってるじゃないか。俺のキミに対する思いは一貫しているはずだぜ」
 これが東国原知事の「今のところ」なのである。
《信用》とは、将来という不確かなことに対し、
「どういう事態になろうとも、いま私が明言したことを貫きます」
 と約束し、それを相手や周囲が信じることなのだ。
 つまり、東国原知事が問われているのは、「今」ではなく「将来」に対する約束であり、それを貫く姿勢なのだ。
「今は考えておりません」
 と「今」を繰り返す人間を、私は信じない。
 

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