畑指南役の〝映芳爺さん〟は、雨の日以外は毎日、畑である。
雨が降った翌朝でさえ、
「畑に水をやってくるけん」
と言って出かけ、愚妻をあきれさせている。
私はこのところ忙しく、とても畑に行く時間がない。
映芳爺さんには何度もそれを言ってあるのだが、
「草取りが大変じゃ」
「畑を耕そうと思うたが、息が切れる」
そう言って、老獪なプレッシャーをかけてくるのである。
昨朝も、
「ほれ、今年のジャガイモは最高じゃ」
と言って、私に見せにきた。
「わかった。一段落した畑に行くけん、もうちょっと待ってくれ」
私は謝るハメになる。
交渉術について、私はずいぶん本を書いているが、映芳爺さんには負けるのだ。
これを「年の功」というのか。
映芳爺さんの〝交渉術〟
投稿日: