事に臨んで「即断」するためには、シミュレーションが必要だ。
いや、逆だ。
絶えずシミュレーションをしているから、事に臨んで決断が早いのだ。
このことを、
「大事の思案は軽くすべし」
と説くのが、『葉隠』である。
「軽く考えよ」
というのではなく、
「決断に臨んで慌てないよう普段からよく考えておいて、大事が起こったときは、あれこれ考えないでいいようにしておけ」
と訓戒しているのである。
宮本武蔵も『五輪書』において、
「我が太刀少しも上げずして、いかにも強く打つなり」
と記す。
「石火の当たり(至近距離)においては、太刀を構え直さず、その場から瞬時に打ち込むべし」
という意味で、間合いに入ったときは瞬時に攻め込んでこそ、勝機を得るというわけだ。
言い換えれば、普段から稽古を積み、瞬時に攻め込めるだけの技量を養っておけということである。
福島原発事故は、対応が後手にまわったことで「人災」となった。
東電も政府も、これまでシミュレーションが足りなかったということであり、普段の〝稽古〟を怠ったということになる。
すなわち、危機に臨んでそれを克服できるか否かは、「普段」という日々を、どう処するかで決まるということなのだ。
人生もしかり、か。
「東電」と「葉隠」と「五輪書」
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