「あと2週間ほどで正月だな」
小学生の稽古が終わって、そう言うと、
「エエッ!」
驚きの声をあげたので、私が驚いた。
子供たちにも季節感が希薄になってきたようで、
「もういくつ寝ると、お正月」
と、正月を待ちわびたのは、今は昔ということか。
真冬にアイスクリームを食べ、元旦からカレーを食べる時代であれば、それも当然か。
私が「あと2週間ほどで正月」と言ったのは〝まくら〟で、このあとに続けて、
「だから道場の掃除を一所懸命やろう」
と言いたかったのだ。
道場では、稽古が終わったあと、雑巾(ぞうきん)で床を乾拭(からぶ)きさせている。
ところが「エエッ!」と驚かれて、そのあとの言葉が出なかったという次第。
子供たちが乾拭きし始める。
見ていると、その中の一人、低学年の男の子が雑巾に足を乗せて拭いているではないか。
「コラッ! 足で拭くとは何事だ」
叱りつけると、その子はキョトンとして、
「ママだって足で拭いているんだよ」
これには、さすがの私も絶句。
母親の立場もあるだろうから、「キミのママは間違っている」とも言えず、
「家は家、道場は道場!」
と教えたのである。
季節感が遠のき、そして躾(しつけ)も遠のく。
いい時代なのかどうか、私の頭は混乱するのである。
道場の拭き掃除
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