国会で与野党の白熱した論戦がスタートしたが、定額給付金をめぐる問題は、よくよく考えてみると、実に不可解である。
「お金をあげましょう」
と、政府が2兆円も大盤振る舞いしようとしているのに、国民の多くが、
「いりません」
と、政府を批判をしているのだ。
この不景気で、お金は誰だってノドから手が出るほど欲しいはずなのに、
「給付金なんてムダ」
と言っているのだ。
しかも、ノーの理由が、
「福祉や医療、中小企業対策など、もっとほかにつかい道があるはず」
と、《私》より《公》を優先すべきだという意見なのである。
平成10年に地域振興券が発行されたときは、《公》より《私》が最優先で、
「おッ、ラッキー!」
と大喜びした人が多いようだが、今回はそうはならないのである。
私の愚妻ですら、
「麻生さん、おかしいんじゃない?」
とテレビニュースを見ながら、定額給付金を批判している。
お金をもらえばニッコリするはずの愚妻が、眉間にシワをよせて批判しているのだから、実に不可解だと、私は思うのである。
これをどう解釈すればいいのか。
理由はいろいろ考えられるが、最大の理由は、
「このままでは日本は大変なことになる」
という危機感の、無意識の現れだろうと私は思っている。
これまで、日本は何度も不況の波をかぶってきたが、
「何とかなるさ」
という楽観が国民にはあった。
だから《公》より《私》が最優先で、地域振興券がバラまかれたときは、
「おッ、ラッキー!」
と喜んだ。
ところが、今度は百年に一度と言われる大不況だ。
しかもその一方で、後期高齢者医療制度や年金問題、妊婦のたらい回し事件、通り魔殺傷事件、政治の混迷……等々、世情不安がある。
(日本、ヤバイぜ)
という潜在的な不安感を抱いているところへ、サブブライム問題を引き金に経済危機が襲ってきた。
不沈と信じていた〝日本タイタニック号〟が、
(ひょっとして、このまま進めば氷山に激突するかもしれない)
と、国民の多くが真剣に考え始めたのである。
ところが〝日本タイタニック号〟を操船する麻生船長と乗組員たちは、
「大丈夫。操船は、あたしたちにまかせない。そんなことより、シャンパンでもいかがです?」
ノンキに定額給付金という〝シャンパン〟の栓を抜こうとしている。
だから〝乗客〟が怒った。
「バカ野郎! それどころじゃねぇだろ!」
これが定額給付金に対する批判の実相だろうと思っている。
百年に一度の経済危機という〝氷山〟を、日本タイタニック号の麻生船長は回避できるのだろうか。
「おかしいな。舵を切れば氷山は回避できたはずだったんだが、ゴメン、ぶつかっちゃった」
まさか、麻生船長のそんなセリフを聞くことがないよう祈るばかりである。
タイタニック号と〝麻生船長〟
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