歳時記

貧乏時代の到来とスローライフ

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 ガソリンが180円を突破するなど、いよいよ「貧乏時代」の到来である。
 実際、値上げラッシュなのだから、いまのままでは生活は苦しくなる。
 倒産件数も急増で、今年後半はヤバイことになる、とメディアは報じている。
 だが、「貧乏時代」の到来はネガティブなことだろうか?
 とんでもない。
 これこそ、みんなが待ち望んだ〝スローライフ〟ではないのか?
 いまブームの「夢の田舎暮らし」というやつが、労せずして可能になるのだ。「貧乏時代」が到来するおかげで、クルマに乗らず、電気もつけず、一汁一菜の食事を楽しみ、晴耕雨読の日々を送る、という〝スローライフ〟が実現するのである。
 しかるに、「夢の田舎暮らし」を特集してきた雑誌が、
「生活破壊の時代がやってきた!」
 とネガティブに危機感を煽(あお)るのはどういうことだろう。
 ここは、
「朗報! ついにガソリン180円を突破! ついにやってきた〝夢の田舎暮らし〟」
 嬉々として特集を組んでこそ、整合性が保たれるのである。
 と、まあ皮肉のひとつも言いたい気分なのである。
 こんなことを言うと、元週刊誌記者の私としては〝天にツバする行為〟だが、雑誌というのは〝煽り〟で売るのが商売だから、そもそも定見などあるわけがないのである。
 さて、かくいう私も田舎暮らしにあこがれた時期がある。
 引っ越そうかと真剣に考えた。
 取りやめたのは、吉幾三氏の〝田舎のプレスリー〟という歌を久しぶりに耳にしたからである。
 歌のごとく、かつて若者は、
「オラいやだ」
 と言って、田舎を捨てて都会へ飛び出したのだ。
(そんな田舎に理想の生活があるわけがない。田舎暮らしの欲求は、現実逃避に過ぎない)
 と思ったからである。
 それからというもの、「夢の田舎暮らし」といった類(たぐい)の雑誌企画やテレビ番組を目にすると、
(焚きつけるのもエエ加減にせぇよ)
 と、何ともイヤな気分になるのだが、そこへ貧乏時代の到来である。
 生活破壊が現実味を帯びてなお、「夢の田舎暮らしブーム」は続くだろうか。
 メディアはそれを煽るだろうか。
 たぶん、これまでの「夢の田舎暮らし」という煽りはシカトして、「田舎暮らしに学ぶ節約術」といったハウツーを特集してくるだろう。
 私はメディアの〝変節〟をひそかに注目しているのである。 
  

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