愚妻が昨夜、太ももが痛いと言い出した。
ドキリである。
このままポックリ逝かれると困る。
「まだ早い」
「何よ」
「もう数年は生きておけ」
このあと愚妻怒るまいことか。
だが、愚妻の話を聞いて、今度は私が怒った。
日帰り温泉へ出かけると、数日前から、湯船で屈伸運動を始めたと言うではないか。
「そのせいかしら」
さらり言ったので、
「バカ者!」
私が怒ったというわけである。
「思いつきで余計なことをするんじゃない」
「思いつきは、いつもあなたでしょう」
「違う。わしの場合は思いつきではなく、ひらめきと言うのだ」
「おんなじよ」
論戦は例によって〝場外乱闘〟になってしまったのである。
それにしても、湯船で屈伸運動。
生への執着か、ヒマつぶしか。
しばし考えさせられたのだ。