間もなく、大学の先輩の命日が来る。
亡くなって、丸3年になる。
お勤めで、先輩の墓がある霊園に年に何度か出かけることがあり、そのたびに「ついで参り」をしている。
社会の裏も表も知り尽くした先輩だけに、酒席で教わったことはたくさんあるが、そのなかの一つに、
「カネは汚く稼いで、きれいに使え」
というのがある。
あくどいことをして稼いだとしても、守銭奴にならず、気前よく周囲にバラまく人間は決して悪くは言われない。
反対に、真面目にコツコツ稼いでいても、しみったれた人間は結局、周囲から悪口を言われる。
自分にとって都合がよければ「良い人」、恩恵を与えてくれない人は「悪い人」になるというわけで、人間心理を衝いていて面白くおもったものだ。
「世のなかに良い人も悪い人もいない。あるのは自分の都合だけ」
私の好きな言葉の一つだが、これが人間の実相ということなのだ。
そのうちご案内するが、12月に築地本願寺の『銀座サロン』に出講する。
テーマは拙著『老いに歎異抄』。
略して『老い歎』と私は呼んでいる。
「老い」は「歎くもの」か、「讃歎」するものか。
「歎」という漢字には、「なげく」と「ほめる」の相反する意味がある。
まるで「老い」を象徴しているようだと、思うことである。