歳時記

定年ということ

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自由業の私には定年がない。
再雇用もない。
だから自分で定年を決めなければならない。

「わしは何歳をもって定年とするか」

愚妻に意見を求めると、
「あら、何十年前に定年しているじゃないの」

イヤミなことを言うが、ここは我慢して相談をぶつ。

「わしがいっさいの仕事をやめてリタイヤしたら、クルマで日本一周してこようかと思うがどうだ。宿泊は各地の温泉地だ」
「いいわよ。そのかわり費用は自分で工面してね」
「バカな!」
「どうしてバカなのよ。好きなことするんだから、自分で工面するのが当たり前でしょう」

強硬に主張する。
日本一周は無理か。

「ならば、北海道一周にするかな」
「それでもけっこうな費用がかかるわよ」
「しょうがない。房総半島一周にするか」
「しょっちゅう行ってるじゃないの」

嬉しそうに笑う。
私には定年後の楽しみもないのだ。

「わしは馬車ウマのごとく働き、そして最期は朽ち果てるのか」
「ちょっと、そんなこと言ったら、マジメに働いている人に怒られるわよ」

墓前のお勤めで汗にまみれ、肩甲骨の痛みに歯を食いしばって耐えながらキーボードを打っている。
そのことを声を大にしてアピールするが、むろん愚妻は聞く耳などハナから持たないのだ。

ぐずぐずしていると、リタイヤする前に「人生の停年」が来るやもしれぬではないか。
ボヤいている場合ではない。
気を取り直すが、定年のない仕事も困ったものなのである。

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