歳時記

雨の日のお参り

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ここ2日、寒い日が続く。
一昨日、昨日と通夜葬儀は斎場なので寒くはないが、本日は四十九日のお参りにご自宅にうかがった。

みぞれ混じりの雨。
寒いのはともかく、雨の日は気を使う。
濡れて来られたのでは、施主も迷惑だろうと思うからだ。

替えの白足袋はもちろん、玄関先でパッパッと拭う手ぬぐいも持参。
さらに雨コートを着ていく。
雨コートを着ていれば法衣を濡らさずにすみ、施主にそれほど迷惑をかけることもないと思うからだ。

ただし普段、着ることがないので、昨年は雨コートを忘れて辞去し、途中でUターン。
施主に迷惑をかけたことがある。

その轍(てつ)は踏むまいと自分に言い聞かせて、本日は出かけた。

玄関先で雨コートを脱ぐと、施主(女性)がハンガーに掛けようとしてくださるので、私が言う。

「せっかくですが、コートを掛けると忘れて帰ることもありますので、ご迷惑でなければ玄関に置かせてください」

お礼を言って丁重にお断りしてから、「それに」と続ける。

「こうして雪駄を脱いだすぐそばにコートを置いておけば、絶対に忘れることはないのです」
「なるほど、そうですね」

施主もニッコリである。

で、お勤めをし、お茶を頂戴して辞去。

クルマでしばらく走っているうちに、
(あッ!)

コートを置いたまま帰っていたのである。

すぐにお電話し、取りに引き返すと、施主がコートを手に雨の中を待ってらして、こうおっしゃった。

「申し訳ありません。私が気がつけばよかったんですが」

こういう言葉がスッと出てくるところに、人間としてのやさしさがあるのだろう。

雪駄を脱いだすぐそばにコートを置いておけば絶対に忘れることはないと大ミエを切った私は、じつに恥ずかしい思いをしたのである。

こんなドシを踏みつつ、あと一週間で2月が終わる。
雨コートを忘れたのは私がボケているのではなく、まとまった執筆時間が取れず、気もそぞろのせいだろうと自分に言い聞かせるのだ。

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