歳時記

時計はアナログに限る

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葬儀の場合、たいてい小さな置き時計が僧侶の前に置いてある。
火葬の時間が決まっているので、出棺時間は厳守であるからだ。
置き時計が用意してなければ、自分の腕時計で時間を確認しながら進行する。

いまはたいてい初七日もいっしょに行うので、その時間配分を考えながら読経のスピードを調整する。

アナログの時計であれば、針の位置をさっと見るだけで進行状況がすぐにわかるが、デジタルだと計算をしなければならない。
数字に弱い私は、これが苦手なのだ。

しかも、時間どおりに開式すればいいが、

「ちょっと早いのですが、みなさんお揃いなので」
「お花入れのお時間を少し長く取りたいので、よろしければ早めの開式にさせていただきたいのですが」

係りの人に言われ、何分か早く始まれば、それを計算に入れなければならない。

早まるだけでなく、数分遅れて始まることもある。

時間調整しなければならない。
デジタルだと、この計算が私には苦手なのである。

さらに言えば、たとえば10時とか10時半といったキリのいい開式時間であればいいが、10時15分などという計算しにくい開式時間で、しかも開式が数分前後すれば余計こんがらがるという次第。

時間だけでなく、相変わらず、導師控室から式場への入退室で方向を間違えてしまう。
当たり前だが、入堂と退堂では方向が逆になる。
係りの女性があわてて、
「こちらでございます!」

そんな私だから、大きな駐車場だと、クルマを停めた場所がわからなくなる。
先夜、近所の日帰り温泉で停めた場所がわからなくなってウロウロ。
おかげで湯冷めしてしまった。

ホテルの地下駐車場に停めるときはなおさらで、駐車番号を必ずメモし、エレベータで降りた場所をしっかり覚えるようにしている。

そんな私を愚妻は、
「どうして迷うのかしらねぇ」
とあきれるが、私はこう言い返す。
「バカ者。人生街道さえ迷わなければよいのだ」

すると、すかさず、
「なに言ってるのよ。迷ってばかりいるじゃないの」
ここぞと攻めてきて、不毛の論戦が始まるのだ。

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