先日、火葬場でのことだ。
火葬開始まで少し時間があったので、会葬の方々と一緒にロビーで待っていると、故人のお孫さんである小学校低学年の女の子が、法名札(位牌)を持った喪主の未亡人に、
「この字、何て読むの?」
と質問する声が聞こえてきた。
「これはね、ナモアミダブツと書いてあるのよ」
「フーン。それって、どういう意味?」
微笑ましい光景で、未亡人が何と答えるか耳をそばだてていると、
「お坊さんにきいてごらんなさい」
私に振られたのである。
(ヤバ!)
あせった。
大人に向けてであれば、年代に応じて解説できる。
だが、小学校低学年となるとこれは難しい。
そばにいる何人かの会葬者の方々も興味があるようで、私が何と答えるか、言葉を待っている。
坊主としてモタモタしているわけにはいかない。
「これはね、阿弥陀如来というホトケ様に、いつもや私たちをさしく見守ってくださって有難うございますと書いてあるんだよ」
とっさにそう答えた。
「フーン」
納得してくれたかどうかはともかく、頷いてくれたので一安心。
「阿弥陀如来って何?」などと突っこまれたら、説明に困るところだった。
「要するに何なのさ」
と結論を問われるのがいちばん困るのだ。
それはともかく、興味を持って私に質問してくれた女の子は素晴らしいではないか。
愚妻など、私に仏法で質問したことなど、ただの一度もない。
帰宅して、火葬場での話を愚妻にすると、
「あら、そう」
「わしが何と答えたと思うか?」
「なんでもいいから、白衣を早く脱いでよ。洗濯するから」
度し難い女なのである。