歳時記

「独房生活」を楽しむ

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自宅療養生活も一週間をすぎた。
自室に籠もり、アマゾンのプライムで映画三昧が続いている。

なぜなら、階下に降りるのは命懸けであるからだ。

風呂でも入ろうと、うっかり手袋をしないでドアの取っ手に手を掛けると、
「ちょっと! 触らないの!」
愚妻がすぐさま駆けつけ、取っ手を除菌シートで拭う。

万事、この調子で、階下は敵の占領地なのだ。

だから皮肉のひとつも言いたくなる。

「おまえはジョギングが好きじゃのう」
「何よ、それ」
「除菌、除菌のジョッギング」
「怒るわよ!」

じゅうぶんに怒っていても、さらに怒ろうとする。
これが、貪(むさぼ)りという煩悩の一つなのである。

せっかくだからと、そのことを愚妻に言って聞かそうとするが、むろん聞く耳など持つはずもなく、
「ごちゃごちゃ言ってないで、はやく風呂に入って二階に上がりなさいよ!」

それでも、近所に住む娘に、あんみつなど私の好物を買ってくるよう依頼し、「置き配」で受け取ると私の自室に運んでくる。

一見、やさしいようではあるが、騙されてはいけない。
できるだけ私を自室に封じ込めておく作戦なのだ。

だから、注文すれば何でも運んでくる。
声なんか出さない。
LINE電話である。

「おい、紅茶」
「冗談じゃないわよ」
「降りていくぞ」
「いま持って行くわよ」

実に便利。
ホテルのルームサービスである。

独房で、あんみつを食べ、紅茶を飲みながらビデオ映画を観る。
こんな生活も悪くはないのだ。

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