歳時記

「上海」というトラウマ

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新型コロナウィルスのニュースで、上海の様子をレポートしていた。
何年前だったか、愚妻と上海に行ったときのことが、まざまざと蘇る。

夜、メシを食いに出て、私は愚妻に言った。
「いいか、うまい店は路地裏にあるのだ」
「ホント?」
「黙ってついてこい」

上海へはかつて連載する劇画原作の取材で行ったことがあり、現地在住の人に案内されたことがあるのだ。

メイン通りを外れ、路地裏をウロウロして、居酒屋のような店に飛び込みで入った。
愚妻が、いつまで歩かせるのかと、不満顔を見せたからだ。
汚れたメニューに食べ物の写真があったので、適当に選んだ。

その一つに、豚肉をサイコロ型に焼いて壺に入れた料理があった。
一つ食べて、妙な味がした。
愚妻はそれを食べかけて、
「私、これは嫌い」
皿にもどした。

私も食べるのをやめようかと思ったが、メンツがある。
「バカ者、うまい店は路地裏にありなのだ。こんなうまいものを食べないのか」
と言って完食した。

その夜のホテル。
激しい下痢でトイレから出られなくなった。

愚妻が勝ち誇ったように言ったものだ。
「ほら、だから私は食べなかったのよ」

新型コロナウィルスのニュースに限らず、上海がテレビで報道されるたびに、愚妻はこの時のことを持ち出し、
「ほら、だから私は食べなかったのよ」
と何度でも言う。

上海は私のトラウマなのだ。

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