歳時記

地震の予行演習

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我が家の二階に上がる階段は、上がり始めると、前にも増してパッパッパッと明かりがつく。
何と言うライトか知らないが、防犯用のやつを小型にしたものだ。

私が上がろうとすると、人体を感知してパッパッパッパッ。
初めての日は、ビックリして階段から転げ落ちそうになった。

愚妻は、こうした電気製品が大好きなのだ。

ずいぶん前になるが、自動で掃除するルンバが出たとき、テレビのCMでこれを見た私が、
「おっ、便利なものがあるな」
と言ったら、
「あら、私の部屋にあるわよ」
平然と言ったので、二の句が継げなかったことがある。

ライトのパッパッパッは、愚妻に言わせば、地震に備えてのものだそうだ。
過日、テレビが連夜の放送で大地震をやっていて、それに大いに感化されたのだろう。
もともと地震対策が好きな女なのだが、それに拍車がかかった。
罪なテレビである。

だが、いくら備えていても、地震はいつ来るかわからない。
日頃の予行演習が何より大切だ。

で、昨日、日帰り温泉から帰宅してから愚妻と話し合い、予行演習をすることにした。

テレビを見ながら不意をついて、
「あっ、地震だ!」
私が叫ぶが、愚妻は無反応でノンキにお茶を啜っている。

「ダメではないか」
叱責すると、
「そんな掛け声じゃだめよ」
と言って、
「あっ、地震!」
でっかい声で叫んだのである。

ビックリして、私は飛び上がりそうになった。

かくして昨日一日、このクソ忙しいのに、
「あっ、地震だ!」
という一語を、夫婦して競い合った次第。

この努力がムダになれば結構なことだと念じつつ、
「ひょっとして」
という思いは拭えないのである。

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