歳時記

洗濯をしてみたい

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葬儀や法事など、法務に出かけるときの支度は、愚妻の役目である。
袈裟から衣体(衣)、念珠、下着、足袋まで、法務に応じて愚妻が用意し、カバンに詰める。

「通夜だ」
「一日葬だ」
「一周忌だ」

私は法務の内容を告げればよい。

そして、法務から帰ると、その場に脱ぎ捨てる。
すると愚妻が、衣体はハンガーに掛けて陰干し、白衣や下着はすぐに洗濯する。

楽に思えるだろうが、ここまで来るのに、私はどれほど苦労したことか。

「違う、その衣じゃない」
叱責すると、
「じゃ、自分でやりなさいよ!」
すぐにムクれる。

こうしたバトルを乗り越え、なだめたり、すかしたりしながら仕込んだのである。

だが、葬儀を勤めるうちに、
「このままではマズイ」
と考えるようになった。

過日も、奥さんに先立たれた熟年の喪主の方が、
「この歳で、まさか寂しい正月を迎えるとは思いもしませんでした」
と語った。

人ごとではない。
愚妻が先立ったり、介護が必要になれば、私一人では何もできなではないか。
「家庭内の終活」をせねばならぬ。

通帳関係については、
「娘にちゃんと言ってるから、あなたは知らなくていいのよ」
これはニベもない。

食事は何とかなるだろう。
さしあたっては、洗濯である。
洗濯ができなければ、たちまち法務に支障を来す。

よし、洗濯をやってみよう。
昨夜、寝ながら考え、今朝、そのことを告げると、
「ちょっと、お願いだから余計なことはしないでよ!」
恐い顔でクギを刺された。

「しかし、お前に先立たれると、わしは困るではないか」
「どうして私が先に逝くのよ!」
プリプリと怒り、当分、洗濯の心配はなさそうである。

 

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