歳時記

言葉のバトル

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私は動物の番組が大好きである。
日曜夜7時30分から始まるNHKテレビ『ダーウィンが来た』がお気に入りで、毎週、楽しみにしているが、見逃すことが多い。

録画してまで見る時間がないし、録画の仕方を知らないので、原稿を書きつつ、時計に目を走らせながら番組が始まる時間を待つ。

それでも、執筆に没頭すると時間が経つのを忘れてしまう。

昨夜がそうだった。
日中から、「今夜は『ダーウィン』を見るぞ」
と愚妻に何度か告げておいたが、仕事をしていたらコロリと忘れ、気がついたらすでに番組は終わっていた。

「あれほど言っておいたのに、なぜわしを呼ばんのだ」
叱責すると、
「今回は猪で、イマイチだったわ」
しらっと言う。

イマイチかどうかが問題なのではなく、なぜわしに番組開始を伝えなかったのか、そのことを問題にしておるのだが、愚妻には通じない。
いや、通じないフリをしているのか。

年末から言葉のバトルが続いている。

今日も昼過ぎ、
「買い物に行ってくるけど、いま洗濯中なので、風呂に入るときは洗濯機に触らないでよ」
と愚妻が言う。

「バカ者。わしがこれまで一度でも洗濯機に触ったことがあるか。一家の亭主は、そんなもには触らないようになっておるのだ」
攻めると、
「いつもは触らない人が、気まぐれで触ったりするからよ」
切り返してくるのだ。

「今夜はイタ飯屋に行こうかな」
つぶやいただけで、
「いま予約したから。いつもどおり6時よ」

瞬時の対応に、
「おまえは、こういうことだけは早いな」
嫌味を言うと、
「ありがとう」
しらっと言う。

「ババア!」
と叫んで「ババア!」と返ってくるのは谺(こだま)であって、我が家は、
「ジジイ!」
という声が返ってくる。

晩年を迎えながら、安穏な日々はめぐってきそうもないのだ。

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