歳時記

地震に備える

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 朝早くから、階下でゴトゴトと音がしている。
 降りると、愚妻が荷物を動かしている。
「何をしておる」
「大地震に備えて、水や非常食の保管場所を変えるのよ。すぐに取り出せるところがいいでしょう?」
 大阪地震に触発されたようだ。
 結構な心がけだ。
「しっかり頼むぞ」
 激励し、居間でコーヒーを飲んでいて、ふと思った。
(そもそも水や食糧はどこにしまってあったんだ?)
 何を、どのくらい買ってあるのか、私は知らない。
 どこにしまってあるのかも知らない。
 愚妻がいなければ、備蓄食糧はないのと同じではないか。
 これはまずい。
「で、どこにしまったのだ」
 問うと、
「いいのよ、私がわかっているから」
 いいわけがない。
 いいわけがないが、「教えてくれ」とは言いたくない。
 何事も愚妻まかせにしてきたツケが、こういうときに回ってくる。
 これからは、自分で動こう。
 自己責任の時代は、家庭にまで入ってきたのだ。

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