歳時記

湿布とステッキ

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 左足のふくらはぎが、急に痛くなった。
 今日で3日目である。
 理由はわからない。
 少し腫れている。
 昨夜、稽古のとき、少し身体を動かしたら、激しく痛み出した。
「ちょっと、何やったのよ」
 愚妻が眉を吊り上げて怒るが、私は何もやっていない。
 歩いていて、いきなり痛み出したのだ。
 そのとおりを言うのだが、愚妻は信用しない。
「何かやったでしょう。無茶な稽古をしたでしょう」
 まるで、自白を迫る刑事なのである。
「そうなんだ。ちょっと稽古をやりすぎた」
 根負けして、私がウソの〝自供〟をすると、
「でしょう。私にはわかっているんだから」
 愚妻が勝ち誇ったように言い、追及は終わる。
 なるほど、こうして自供を強いられ、冤罪になっていくのかと、身をもって知ったのである。
 さっそくステッキを用意する。
 すると、愚妻がまた眉を吊り上げ、
「ちょっと、ステッキより湿布が先じゃないの!」
 価値観の相違である。
 私はあえて反論しなかったが、湿布よりも、ステッキをいかについて歩くか、カッコのほうが大事なのだ。
 

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