歳時記

「足らざる」考

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 昨夜、京都から帰宅。
 この忙しいのに、愚妻と紅葉見物である。
 京都のホテルがなかなか取れず、毎年、紅葉見物に行ったときに一年後の予約を頼んで帰る。
 仕事が詰まっていて京都どころではないが、一年前に予約しているので、仕方なく出かけた次第。
 国宝展は大混雑だというので、事前にチケットを購入していたが、やっぱり大混雑。
 曜変天目茶碗だけ見て、
「さあ、ホテルに帰ってサウナに入るぞ」
 愚妻に言うと、
「ちょっと、観光に来てサウナのことを考える人、いないでしょ」
 たいてい二泊するが、ホテルの会員はサウナは無料なので、これが私の楽しみでもある。
 紅葉見物と言っても、毎年、南禅寺など同じ場所に行き、ホテル内でこれも毎年、同じ料理を食べる。
 何年、通ったことだろう。
 唐突に、厭(あ)きがきた。
「もう来年は京都はやめだ」
 愚妻に宣言する。
「どうしたの?」
「今年のルームナンバーは555号室ではないか。ゴーゴーゴーで、今まで京都に来ていたが、それはもうよせというシグナルだ」
「フーン」
 愚妻は首を傾げていたが、もう京都は堪能したのだろう。
 あえて異はとなえなかった。
 旅行に行けないときは出かけたくなり、ちょこちょこ出かけていると感激は薄い。
「足らざるをもって至福とするなり」
 京都で思ったことである。

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