歳時記

地震の備え

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 まさか、熊本を地震が襲うとは思いもしなかった。
 テレビニュースを見れば、お気の毒としか言いようがない。
 と同時に、わが家の地震の備えが気になった。
「非常時の用意をしておけ」
 と愚妻に命じると、
「してあるわよ」
 との返答。
 リュックに詰めて、玄関の隅に置いてあるのだそうだ。
 携行食、水、医薬品、携帯トイレまで入れてあるという。
 しかも、外へ飛び出るときの衣類は、自分のベッドの下に入れてあるそうだ。
「わしの服は?」
「あなたのことまで知らないわよ」
「パジャマで飛び出るのか?」
「好きにすれば」
 夫婦なんて所詮、他人同士が一つ屋根の下で暮らしているに過ぎないという現実を、あらためて認識した次第。
 天変地異は、いつ、どこで起きるかわからない。
 したがって、それにどう対処し、準備するかということよりも、
「いつ見舞われても悔いなし」
 という覚悟をもって、今日を生きていくことのほうが大切なのではないか。
 愚妻にそのことを言うと、
「準備するのが面倒なだけでしょ」
 一つ屋根の下で暮らす〝他人〟は、どこまでもクールなのだ。

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