歳時記

口は禍の元

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 首から肩にかけて、間歇泉のごとく、ズキズキと痛みがやってくる。
 このことを先般ブログに書いたところ、〝同病〟の友人が電話でアドバイスをしてくれた。
 頸椎からきているのではないかとのことだが、頸椎のアクシデントが原因であるなら、これは治るまい。
 となれば西洋医学でなく、東洋医学か。
 お灸があったのを思い出し、昨夜、愚妻に用意させる。
 愚妻は磁気を貼る要領で、首から肩から何カ所も貼りつけていく。
 イヤな予感がしたが、黙っていた。
 カチリ、とライターの音。
 と同時に、
「アッチチチチチ!」
 お灸にライターを向けたまま、点火したのである。
 愚かな女だ。
 こういう場合は、まず他所へ向けて点火し、ライターの炎の状態を見てからお灸につけるのだ。
「バカ者!」
 一喝したが、
「あら、熱かった?」
 ノーテンキな返事である。
 このとき私は首痛の原因をハッキリと悟った。
 私は考えることが多いため、脳が肥大して重くなっているのだ。
 一方、愚妻は、考えることが少ないため脳が軽く、したがって首も痛くならないというわけだ。
「お前は脳が軽くていいのう。それに引き替え、このわしは」
 と言いかけたところで、
「アッチチチチチ!」
 何カ所も貼りつけたお灸が、一斉に熱くなってきたのである。
「早く取れ!」
「どうせ私の脳は軽いんでしょ」
 フテくされ、私は「アッチチチ」の郷ひろみ状態。
 口は災いの元なのだ。

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