歳時記

糸の切れた凧(たこ)

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 松島みどり法相の「うちわ配布」と、小渕優子経済産業相の「観劇」で安倍内閣が揺らいでいる。
「女性の積極登用が裏目に出た」
 という論調もあるが、それは結果論。
 問題の本質は、安倍首相の「欲」と「錯覚」にあると私は見ている。
  改造前の内閣はスキャンダルと無縁で、閣僚が一人も交代せずに617日も続き、「戦後最長内閣」となっていた。
 つまり、これ以上の安泰はないという内閣なのだ。
 それを、なぜ改造したのか。
 ここに安倍首相の、いや私たち人間の「欲」と「錯覚」を私は観るのだ。
 
 人間というやつは、順風のときは風にまかせてじっとしていればいいものを、とかく動きたがる。
「時の勢い」は、運の後押しがあって初めてつくものであるにもかかわらず、「自分の実力」と錯覚するからだ。
「努力の結果」だと勘違いするからだ。
 だから、
「よし、この勢いに乗じて、もう一押し」
 となる。
 これが「欲」である。
 錯覚に突き動かされた欲は、地に足がついていないから、足もとをすくわれる。
「人間は得意の絶頂で転ぶ」
 とは、こういうことをいうのだ。
 凧(たこ)は、糸の長さ以上には上がらない。
 この当たり前のことを忘れて、
「もっと、もっと」
 と天まで上げようとする。
 こうして上がった凧を「糸の切れた凧」というのだ。

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