歳時記

畑で人生を学ぶのだ

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 畑に行ってきた。
 大指南役のSさんが駐留する小屋に声を掛けるが、応答なし。
 散歩か。
 しょうがないから、私がネギを植え始めた。
「ちょっと、浅いんじゃない?」
 愚妻が横から余計なことを言う。
 腰が痛いのに、これ以上、深く掘れるか。
「バカ者。ネギは数年前、わしが初めて畑をに手を染めたとき、最初に植えたものだ。余計な口をはさむな」
「一列でいいんじゃない?」
「二列だ。わしが初めて畑に手を染め・・・」
「わかったわよ」
 かくして私が植え、ネギの根っこに土をかぶせたところへ、S大指南役が笑顔で登場。
 吐息が酒臭い。
 ビールを飲んで寝ていたようだ。
 で、開口一番。
「浅いよ、それじゃ。もっと深く掘らなくちゃ!」
「土、かぶせ過ぎ。窒息しちゃうよ!」
 愚妻の勝ち誇ったような顔。
 亭主の面目、丸つぶれ。
 しかも、
「二列じゃなく、一列。そんなに間隔をあけてどうするの」
 私の立場はなくなり、黙々とタネを蒔(まき)き始める。
 私のやり方は〝花咲爺さん〟で、景気よくパッと蒔く。
「ほらほら、まんべんなく蒔かなくちゃ」
 S大指南役からダメ出し。
 かくして、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、小カブなどをやっとこさ蒔き終え、ついでにまだ耕していない場所に堆肥をやり、苦土石灰を蒔くが、これまた私は〝花咲爺さん流〟。
「ちょっと」
 とS大指南役。
「前も言おうと思ったけど、あんまり言うと悪いので黙っていたけど、それじゃ、蒔き過ぎだよ」
「どうせなら、たっぷりと・・・」
「ダメダメ、多すぎるのはダメ。足りないのはよくても、多すぎるのはダメ」
 そして、
「何だってね、足りないくらいでちょうどいいの」
 そうだ。
 家康だったか、
「足らざるは、過ぎたるより勝れり」
 と言っているではないか。
 今日の私は、いいところがなかったが、畑はホントにいろんなことを教えてくれる。
 それだけでも、畑に来た甲斐があったではないか。

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