歳時記

お盆と地曳網

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 腰痛に加え、右膝がギシギシ痛む。
 階段を降りるのも、ままならない。
 脊柱管狭窄症がぶり返したのでなければいいが、イヤな感じである。
 それで昨夜、孫(小1、男児)を連れ、愚妻の運転で九十九里の仕事部屋へ来た。
 近くの温泉健康ランドへ行って、一日浸かっていようというわけだ。
 本当は、名湯の温泉へ行きたいのだが、とても出かける時間はない。
 で、今朝のこと。
「10時から、海岸で観光地曳網をやるんだって」
 原稿を書いている私の背に、愚妻が声をかけた。
「行ってくればよい」
 私が言うと、
「あなたは?」
 孫を私一人に押しつけるのか、と非難の響きがある。
「行かん」
「どうしてよ」
「愚か者がわからんのか! いやしくも僧籍にある身が、お盆に地曳網をして喜べるか。無益な殺生じゃ」
「バカみたい」
「何が」
「昨日、トンカツを食べて、おいしいと言って喜んでたのは誰よ。昨日だって、お盆だわよ」
 ああ言えば、こう言うで、口の減らない女である。
 しかし、お盆に地曳網を引いて歓声をあげる気には、私はやはりなれないのである。

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