周知のように、東京電力・清水正孝社長が入院している。
高血圧と極度の目まいということだ。
「経営トップの最大の責務は、危機における陣頭指揮にある」
ということからすれば、清水社長は世論の批判を浴びて当然だろう。
気の毒なこととしながも、私が首をひねるのは、
「なぜ入院したのか」
ということだ。
責任をまっとうするなら、名を惜しむなら、倒れるまで陣頭指揮を執ればいいではないか。
論語に『死而後已(ししてのちやむ)』という言葉がある。
「命がある限り努力しつづける」
という意味で、
「有徳の士は、折れない強固な意志を持たなければならない。その任務は重く、目的までの道は遠い」
とする。
清水社長は頑張って陣頭指揮を執りつづけるべきだった。
そして体調を崩して倒れたならば、病院に担ぎ込まれる。
いまと同じ入院状態になるのだ。
すなわち、倒れる前に入院すれば批判を浴び、倒れてから入院すれば「責任感の強さ」を世間は認めるということなのである。
この〝腹のくくり〟ができない清水社長に、優良企業のなかで温々(ぬくぬく)と人生を送ってきたひ弱さを、私は見る。
被災地の方々の忍耐強さに、世界は目を見張り、「武士道の国」と賞賛した。
その一方で、原発事故という国難を引き起こした経営トップが、病院のベッドで寝ていることを、世界はどう見るだろうか。
武士は名を惜しむ。
清水社長はいま、世界から注視されている。
武士は名を惜しむ
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