歳時記

ミダスの手

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「ミダスの手」というギリシャ神話がある。
 バラ園を営んでいたミダスが、あることから王様に気に入られ、
「願いを何でも叶えてやろう」
 と言われる。
 すると、欲張りで、何よりも黄金好きなミダスは、
「手に触るものが、何でも黄金に変わるようにして下さい」
「よし、わかった」
 ということで、王様は願いを聞き入れた。
 さあ、それからが大変。
 食べものも飲みものも、ミダスが手にするものすべてが黄金になってしまい、飢えと渇きに苦しむのだ。
 ミダスは王様のもとへ駆け込み、
「さっきの願いを取り消してください」
 と懇願する。
「そうか。では、川の源で身体を洗うがいい」
 と言われ、さっそく洗って元の身体にもどるのである。
 うろ覚えだが、そんな神話だ。
 で、道場の小学生たちに、
「一つだけ願いを叶えてやると言われたら、何をお願いする?」
 と問いかけてみた。
「宿題をなくして欲しい」
「お金がザクザク欲しい」
「塾に行きたくない」
 ミダスのような返事が多かったが、ひとりだけ、
「空を飛ぶようになりたい」
 と言った女の子がいた。
 夢や願望が持ちにくい時代と言われるが、こういう子供がまだまだいることに、ほっと安心したのである。
 

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