歳時記

啓蟄(けいちつ)を喜べる人

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 今日は啓蟄(けいちつ)である。
 啓蟄とは、地中で縮こまっていた虫が暖かさに誘われ、もぞもぞと這い出てくる日のことで、この日を境に本格的な春の到来となる。
 ちなみに「はる(春)」という言葉は、「発(は)る」「張(は)る」「晴(は)る」「墾(は)る」の意味を持つそうだ。
「万物が発る」「木々の芽が張る」「天候が晴る」「田畑を墾る」となり、まさに「春」は、桜の花がつぼみから満開へと咲き誇っていく季節というわけである。
 だが、私は春があまり好きではない。
 春は卒業、退職、進学、就職、新年度など人生の大きな節目であり、新たな人生の始まりでもある。
 それが、何となくイヤなのだ。
 要するに、なまけ者なのだろう。
 啓蟄であろうとも、もぞもぞと地中から出ていくのは大儀で、私が虫であれば、ずっと穴倉で寝ているに違いない。
 だから、
「きょうは啓蟄です」
 なんて、朝っぱらからテレビのアナウンサーに笑顔で言われると、溜め息がもれる。
 それに引き替え、愚妻の精神状態は私と逆で、次第に春めいていく。
 花粉症で苦しんではいるが、くしゃみが出なかったら、鼻歌が飛び出していることだろう。
 春を喜べる人は、人生に屈託がないということにおいて、きっと精神は健全なのだ。
 

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