今日は、第1回「日劇ウエスタンカーニバル」が開催された日だ。
初日だけで9千500人、1週間で4万5千人を動員。これを契機に日本はロカビリー旋風が吹き荒れることになる。
芸能界に関する資料をネットで調べていたら、ひょっこりそんな記述に行き当たった。
いまから53年の昭和33年2月8日のことで、当時、8歳だった私に記憶はもちろんないが、その熱狂ぶりについては、昭和の懐古番組などで何度か観たことがある。
だからロカビリーのことは直接には知らないのだが、週刊誌記者時代、「ロカビリー3人男」のひとりである山下敬二郎さんにインタビューしたことがある。
山下敬二郎さんは今年の1月5日、胆管ガンによる腎不全のため71歳で亡くなられたが、享年から逆算すると、インタビュー当時、山下さんは40歳前だったろうか。
赤坂東急ホテルに部屋をとってインタビューした。
芸能人はこれまで、それこそ数え切れないくらいインタビューしてきたが、そのなかでも山下さんは印象に残る1人だ。
山下さんの父親は、落語家で喜劇俳優の柳家金語楼で、金語楼は国民的人気者だったが、彼は真顔でこう言った。
「金語楼の息子が山下敬二郎じゃなく、山下敬二郎の父親が金語楼なんだ」
往年の人気はすでになかったが、この強烈なプライドに私は引き込まれたものだった。
そしてインタビューの途中で彼は立ち上がり、何気なく窓辺から下を見やって、
「あっ、ジャガーのEタイプだ!」
と感嘆の声をあげた。
私も立ち上がって見下ろすと、白いジャガーのオープンカーがホテルの玄関前に停まったところだった。
「いいな、カッコいいな。オレ、あれが欲しいんだよ」
と、目を輝かして早口に言った。
まるで少年のようだった。
強烈なプライドと、少年のようなあどけなさ。
(この人は、ウェスタンカーニバルで超人気者になって以後、まったく歳を取っていないのではないか)
ふと、そんなことを感じたものだった。
ロカビリーに熱狂した女性たちは、熟年世代になっている。
このお婆ちゃんたちの目には、いまジャニーズ系のアイドルグループに黄色い声援を送る少女たちの姿が、どう写っているのだろう。
若かったころの自分を見るか、それとも眉をひそめるのか。
今日が、第1回ウエスタンカーニバルの日だと知って、そんな思いがよぎるのである。
半世紀前のロカビリー旋風
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