歳時記

昼間の空に星を探す

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 昨日は、九十九里の仕事部屋へ行こうと思っていたのだが、気が変わって銚子へ行った。
 犬吠埼の京成ホテルに天然温泉の露天風呂があり、それに入りたくなったのだ。
 何しろ目前は太平洋で、遠くに水平線を望む。
 ま、気分は最高ですな。
 で、露天風呂に手足を伸ばし、青空を仰ぐ。
 そういえば、訓練すれば昼間の空でも星が見えるという話を思い出した。
 じっと青空を凝視する。
 眼が痛くなった。
 訓練もしていない私の眼で、星が見えるわけがない。
 納得しつつ、
(しかし)
 と考える。
 眼に見えないだけで、星は厳然と空に在る。
 しかるに私たちは、
「この眼でみなければ信じない」
「この耳で聞かなければ信じない」
 と言う。
「見える」「聞こえる」がいかに不確かなことであるか。
 青空を仰ぎながらそんなことを考えていると、小学生くらいの男の子が露天風呂に入ってきて、私のマネをして空を仰ぎ見た。
「坊や、星だよ、星。見えるかい?」
 そう言ってニッコリ笑いかけると、
「おじさん、星は夜に出るんだよ」
 さとすように言った。
「夢のない子供が多すぎるのではないか」
 風呂からあがって、愚妻にそのことを話すと、
「ちょっと、ヘンなこと教えなかったでしょうね」
 キッとニラんだ。
 夢がないのは子供だけじゃないのだ。

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