歳時記

今朝、畑で一輪車を使う

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 今朝、畑に行った。
 例によって、畑指南役である87歳の親父、収穫担当の愚妻、草取りを担当する私の3人である。
 草取りといっても、これまでの100坪から一気に20坪とスケールダウンしたので、私の役目はたいしてないのだが、
「畑に行くと息が切れていけん」
 と指南役が毎日うるさいので、何とか週に1回はいっしょに行くようにしているのだ。
 20坪ではたいした収穫もないし、夏の猛暑で野菜のできも悪いので行ってもしょうがないのだが、
「今週は天気が続くのう」
 と、指南役が聞こえよがしにつぶやくので、
「じゃ、明日、畑へ行くか?」
 私もついサービスしてしまうのである。
 畑には、Sさんという70歳になる畑のエキスパートが小屋を建て、日中は〝常駐〟していて、何くれと世話を焼いてくれる。
 これが大助かりで、ウチの親父が畑の指南役なら、Sさんは「大指南役」といったところか。
 で、今朝。
 S大指南役から、畑に堆肥を入れるよう私に指示が下った。
 堆肥も、畑まで運ぶ一輪車も、S大指南役が用意してくれ、
「さっ、運んで下さい」
 ところが、一輪車など使ったことがない私にとって、これを畑まで運び上げるのが難儀なのである。
 ハァハァ言いながら頑張って2度、畑に運んだところで、
「もう1、2杯ですかねぇ」
 と、S大指南役が一輪車の続行を命じたが、
「いや、Sさん」
 と私は言った。
「及ばざるは過ぎたるより勝れりのたとえもあります。堆肥も少し足りないくらいでちょうどいいと思います」
 S大指南役はキョトンとしていたが、
「そんなもんかねぇ」
 と、首をフリフリつぶやいていた。
 作業が一段落したところで、ありがたいことに、S大指南役が冷たいお茶を持ってきてくださって、
「じゃ、このあとネギを植えるんですね」
 とおっしゃったので、私はお茶を吹き出しそうになった。
「いえ、今日は帰ります。ネギはまた来週。楽しみは少しずつ、というやつです。楽しみも貪(むさぼ)ると苦痛になりますから」
 私はあわてて言った。
 どうやら、これからはS大指南役との戦いになりそうである。
 ウチの指南役はたわいもないが、S大指南役はマジメで、熱心なだけに手強い。
(いかに楽をすべきか)
 そばの一輪車を見やりながら、私は自問した。
 まさか還暦を迎えて一輪車で堆肥を運ぼうとは、畑に来るまで夢想だにしなかった。

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