午前6時15分。
とりあえず脱稿である。
やれやれ、風呂に入って、週刊誌でも読みながらスイカを食べるか。
そう思い、隣室の愚妻を叩き起こそうかと思ったが、自重した。
愚妻は、スイカがあまり好きではないのだ。
叩き起こして、しかも好きでもないスイカを用意しろといえば、柳眉が逆立つことが目に見えているからである。
先日もスイカでもめた。
「おい、スイカ!」
風呂から怒鳴ったら、皿に入れたスイカを持ってきて、ドンと無言で風呂蓋の上に置いた。
「なんだ、その顔は」
「何十年も見てるでしょ」
「おまえという女は結婚して36年、〝すみません〟というセリフを一度も言ったことがないな」
「だって悪くないもの」
こういう女なのだ。
スイカは自分で冷蔵庫から出して、風呂に持って行こう。
でもなァ。
冷蔵庫を自分で開けたことが、私は一度もないのだ。
何となく気後れして、スイカは愚妻が目ざめてからにして、とりあえず風呂に入ることにするか。
スイカと愚妻
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