歳時記

早朝4時30分の目覚め

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 今朝、庭の物音で目が覚めた。
 水道の水でバケツを洗う音だ。
 時計を見ると、午前4時30分。
 87歳の〝畑指南役〟が、これから畑に出かけるのだろう。
 ガタゴトとうるさいのである。
 私の部屋は、ちょうど水道がある真上の二階なのだ。
 私が結石で難儀したとき、
「無理をせんで、ゆっくり休養したほうがええど」
 と指南役は心配してくれていたはずなのに、早朝4時30分からガタゴトやれば、私の目が覚めるではないか。
 私の身体を気づかったことは、すでに忘却の彼方なのだろう。
 ひと風呂浴びたところへ、愚妻が起きてきた。
「どうしたの?」
 私のイラついた顔を見て言う。
「原稿が予定より遅れているのだ」
「じゃ、遅れを取りもどせばいいじゃない」
 アクビをしながら言った。
 そうだ、私に欠けているのは、このシンプルな人生観ではないのか。
 私は愚妻のアクビを横目で見ながら、人生の一端をさとった思いがしたのだった。

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