「幸せは、お金では買えない」
という。
お金に恵まれざる人がよく使う言葉で、
(そうだよなァ。〝貧しくても楽しい我が家〟なんて言うじゃないか)
と、自分をなぐさめる
私もかねて、そう思っていた。
だから、金持ちが不幸な目に遭(あ)うと、
(なるほど、幸せはお金では買えないというのはホントだな)
と溜飲を下げ、金持ちに対する妬(ねた)みを解消するのである。
だが、最近はちょっと考えが変わってきた。
「幸せは、お金では買えない」
というのは、「お金だけでは」買えないという意味であって、お金は幸せを手に入れる大きな要素であることに変わりがないのだ。
ところが私たちは、ここを錯覚して、
「お金がなくても幸せになれる」
と解釈している。
もちろんビンボーでも幸せなれる。
だが、確率は低い。
私がいつまでもセレブになれないのは、そうした人生観に原因があるのではないか、とひそかに考えるのである。
むろん、お金をたくさん稼げば、それに比例して苦労も背負い込む。
だからといって、ビンボーであれば苦労が少ないかと言えば、そうではない。
セレブも苦労、ビンボーも苦労となれば、セレブがいいに決まっているではないか。
(なるほど、ビンボーは美徳ならず、か)
と、九十九里の温泉健康ランドに浸かりながら、目からウロコの思いに、私は唸(うな)るのである。
ビンボーは美徳ならず
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