四つ足の肉を食べなくなって、そろそろ2ヶ月になる。
なぜ肉を断ったかというと、理由はない。
酒をやめたときもそうだった。
私の人生の師匠が、
「もう酒はいいんじゃないか」
何気なくおっしゃった一言で、
(そうだな)
と、漠然と思った。
それだけのことだ。
ただ、私のことをよく知らない人に、
「酒はやめたんです」
と正直に言って酌を断ると、
「身体の具合でも?」
と、まず健康のことを聞かれる。
「いえ、健康ですよ」
と答えると、その次は探るような目で見る。
(こいつ、酒乱だからやめたんじゃないか?)
そんな疑念のまなざしなのである。
これでは信用にかかわると思い、いまでは、
(すみません、酒はダメなんですよ)
と言って断るようにしている。
肉も同様で、
「コレステロールですか?」
と健康のことを聞いてくる。
「いえ」
と否定すると、
「仏教の関係ですか?」
「いえ、まったく関係なし。ただの気まぐれです。鳥は食べますから」
正直に告げても、
「ウーム」
と、なんとなく不審の目で私を見るというわけである。
だけど、この年齢になると、「何かを始める」より「何かをやらなくなる」という生き方のほうが、私には気分がいい。
すなわち「捨てていく人生」である。
身体だって石鹸をつけて洗い流せば気分が爽快であるように、20代から70、80代まで、それぞれ節目において〝人生の風呂〟に入って垢(あか)を洗い流す必要があるのではないだろうか。
「人生の垢を洗い流す」
とは、これまで当たり前としてきたことを「やめる」ことだと、私は思っているのである。
明日、12月3日は、私の59回目の誕生日である。
歳を取るごとに、ワクワクしてくるのはどうしてだろうか。
たぶんそれは、肩肘張らず、「頑張らない生き方」というものに、とても魅力を感じているからだろうと、思っているのである。
さて、肉食をやめてみると
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