歳時記

海と、杉の木

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 九十九里浜を散歩した。
 波がゆったりと打ち寄せては返っていく。
 海には波を起こしてやろうという意志はなく、ただ引力のなすまま、単調な動きを繰り返しているにすぎないが、それでも時に破壊的な力を私たちに見せつける。
 近くの神社に行ってみる。
 杉の大木があった。
 
 杉の木には伸びてやろうという意志はなく、陽光に枝を広げ、根から水分を吸い上げ、ただ単調な日々を繰り返しているにすぎないが、やがて天に向かう大木となる。
 人間は大望をいだき、その大望のために苦しむ。
 考えてみれば、愚かなことではないか。
 淡々と生きるのがよい。
「海は大望を抱かず、樹木に野心なし」
 私もそうでありたいと願う。

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