歳時記

愚妻の浅知恵

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 二、三日前、メガネの洗浄スプレーを買うよう愚妻に頼んでおいた。
 で、ふとそのことを思い出して、
「おい、メガネのスブレー、どうした?」
 と問うと、
「まだよ」
 と答えるので、
「そうか」
 と私は納得した。
 で、昨夜。
 風呂で歯を磨こうとして、歯間ブラシが切れていることに気がついた。
 そういえば歯間ブラシを買ってくるよう愚妻に頼んでいたことを思い出し、
「おい、歯間ブラシ、どうした?」
 と問うと、
「まだよ」
 と答えた。
 私はこのとき、ハタと気がついた。
 愚妻は、私の依頼など、すっかり忘れてしまっているのだ。
 ところが、
「忘れていた」
 と言おうものなら、
「バカ者!」
 私が怒るものだから、
「まだよ」
 と答えているのだ。
 なるほど「まだよ」という返答には、
「忘れてなんかいませんよ。諸般の事情で、まだ実行していないだけ」
 というニュアンスがこめられているのである。
 私はうなった。
 ああ言えばこう言うで、私に鍛えられた結果、愚妻はちゃんと知恵を働かせるようになったのである。
 ただし、何でもかんでも「まだよ」で切り抜けようとするところが、甘い。
 私なら、
「明日の午後、買いにいくつもりなの」
「ずっと気になっているんだけど忙しくて」
「まだよ」に、もっとバリエーションをつけて「忘れていた」をごまかすだろう。
 愚妻の浅知恵では、まだまだ私には勝てないのだ。

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